鉄鋼材料の損傷機構一覧表 =疲労=

「鉄鋼材料の実務知識」の第4回「鋼材の損傷機構について」に示した「疲労」をさらに詳細に分類して解説する。

損傷 解説
疲労 静的条件では破壊しない応力が繰返し負荷されるとき裂が発生し、破壊に至る現象が疲労である。応力繰返しによる局所 的変形が原因で生ずる。応力(ひずみ)振幅と破壊までの繰返し数(寿命)の関係をS-N曲線(線図)という。
低サイクル疲労
高サイクル疲労
大きな応力(ひずみ)振幅で少ない繰返し数で破壊する疲労を低サイクル疲労、小さい応力(ひずみ)振幅で大きい繰返し数で破壊する疲労を高サイクル疲労と呼ぶ。巨視的な疲労破面は疲労亀裂進展過程による破面と最終的な過負荷による破面の二つに大別できる。疲労亀裂伝ぱ過程の破面は塑性変形をほとんど伴わない平坦な破面であり、負荷応力の変化によってビーチマーク(貝殻状模 様)が形成されることがある。また、表面硬化材や高強度鋼などでは内部の介在物から亀裂が発生する場合があり、その場合には介 在物のまわりに白色円形のフィッシュアイが表れることもある。一方、微視的にはプラトーと呼ばれる平坦部にストライエーションが形成されるのが特徴的であるが、特に高強度鋼では不明瞭の場合も多い。
接触疲労 交互のヘルツ(振動)応力による割れとそれに続く剥離。
振動疲労 振動による周期的応力が材料に与えられたときに起こる進行的で局部的な永久構造変化。
フレッティング疲労 フレッティング疲労の亀裂は、接触する材料間の微小振動により表面がフレッティング損傷を受けて発生する。亀裂は表面から斜めに進展し、内部に行くほど主応力と直角方向に進展している領域では、破面の特徴は一般的な疲労破壊と同じである。亀裂発生部には微小振動によって生成された磨耗粉のフレッティング酸化物が付着している。
腐食疲労 疲労き裂の発生と進展が腐食によって加速される。亀裂は、表面のピッティングなど、応力集中部より発生する。割れは多数の部位で発生する。
熱疲労 温度変化による繰返し応力の結果として熱疲労が起こる。温度および膨張係数の差異による膨張と収縮が拘束される金属部品であればどこでも起こる割れ形態であり、特に熱循環が繰返されるところで起こる。
熱衝撃 熱疲労と同様、熱応力の繰返しによる割れであるが、比較的短時間の繰返しによるものを熱衝撃と呼ぶ。

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木原重光